リチウムイオン電池は『有害ごみ』へ~武蔵野クリーンセンター小規模火災5件

2017年4月稼働の武蔵野クリーンセンターは、緑に溶け込むデザイン。3方向すべてが「正面」と言える外観となって、市民に受け入れられています。

順調に稼働を続けていた武蔵野市のごみ中間処理施設「武蔵野クリーンセンター」で昨年11月以来、小規模火災が続いています。5件目は今週6月12日(火)の昼前で、改修工事が7月に完了する矢先のできごとでした。

どこで起こった?

5件は、すべて不燃・粗大ごみ処理施設内です。24時間連続運転の焼却施設ではなく、1日5時間のみ運転する施設。3か所で5回。

いつ起こった?

1件目:11月22日。2件目:12月7日。3件目:2月22日。4件目:4月23日。5件目:6月12日。

なぜ発火した?

1件目:二次破砕機で火花が出て、粉塵に着火。  2件目:焦げた空調機と扇風機が見つかったが、発火原因は不明。  3~4件目:原因不明。   5件目:焦げたカセットコンロとカセットボンベが見つかった。

詳細は、議会厚生委員会で5月22日に現地調査を行った、報告書を参照してください。

その後、3~4件目は他施設での状況と考え合わせ、「リチウムイオン電池」による発火との見解に立ち、武蔵野市は、市民の皆さんに向けて、「リチウムイオン電池内蔵の充電式コードレス家電は、『燃やさないごみ』ではなく『有害ごみ』として出してください」とお願いを強化しました。武蔵野市の警告・お願いHP

リチウムイオン電池はちょっとした衝撃や圧力で発火する

腰ポケットに入れていたスマホが、転倒して破損した時に発火する、とは、本当に驚きです。従来の乾電池やボタン電池とは全く違う危険性を持っている製品なのです。消防庁の警告HP消防庁が、モバイルバッテリー(リチウムイオン電池内蔵)に圧力を加えた場合の発火実験動画。

リチウムイオン電池は、身近なところで急増している

日常生活のあらゆる場面で急増してる「充電式家電」「コードレス家電」。便利に使っていて、ほとんど意識することもない…。あらためて考えてみると…。今やほとんどの方が毎日持ち歩いているスマートフォンや携帯電話がまさにそうです。ノートパソコン・タブレット・そのためのモバイルバッテリー。全部そうです。自宅に帰れば、コードレス髭剃り・電動歯ブラシ・コードレス掃除機も人気商品です。デジカメだってもはや乾電池式でなく、ほとんどが充電式です。これらのほとんどにリチウムイオン電池が使われているのです。

寿命が来たら取り外せるのか?

充電式家電やコードレス家電をよく観察してみると、取り外し可能なものとそうでないものがあることがわかります。製品設計上、リチウムイオン電池の危険性に十分配慮されているのか、非常に疑問です。下記の3番目の電動歯ブラシは、一見電池が内蔵されていることに気づかない製品デザインであり、取り外しは不可。表示は底部に小さくあるだけです。

デジカメ底部のフタを開け、フックを外すと、リチウムイオン電池が飛び出してきて、外すことができます。

1 このデジカメなら分別できる

電池は有害ごみ、本体は小型家電・不燃。

 

 

 

 

 

2.この髭剃りは分別できない

充電式家電の代表、充電式髭剃りのオモテ。

充電式髭剃りの裏側。リチウムイオン電池が使われていることはわかりますが、取り外すことができません。

表示はありますが、取り外せない。有害ごみであることがわかりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.もっとわからない製品もある

これも充電式家電の、電動歯ブラシ。

この製品は、リチウムイオン電池が使われていることすら、ほとんどわからないデザインとなっています。寿命が尽きたとき、「有害ごみに出そう」と判断できる方がいるだろうか? 非常に疑問です。

 

 

 

 

電動歯ブラシの裏側。底部に表示はありますが、わかりにくい。

 

 

 

 

 

 

 

メーカーの生産者責任が問われる~この例こそデポジット制にふさわしい

今回の小規模火災から、リチウムイオン電池の危険性が急増していることがわかりました。そして、その危険性が消費者にはっきり伝わり、安全に分別・廃棄・リサイクルできる製品デザインでなければならないことも判明しました。リチウムイオン電池には希少金属(リチウム・コバルト・ニッケルなど)が使われており、寿命が尽きても有価物であるため、本来デポジット制(使用済み製品を販売店に持参すると、払い戻しが受けられる)に最もふさわしい事例であると思われます。リチウムイオン電池が、「ごみ=価値のないもの」として行政のごみ収集に出され、今回のような事故を起こして、下流側に負担をかけるのは、非常におかしい。生産者責任をあいまいにせず、元々の製品デザインから「取り外しが可能」「有価物として回収しリサイクルしやすい」ものにすべきです。私たち消費者も、コードレス家電の便利さのうしろにあるリチウムイオン電池の危険性にもっと注意を払わなければなりません。