体育館エアコン、3校設置~その2 課題は?

体育館入口に設置された「操作盤」。1台ごと独立で操作できます。そして! この操作盤は「施錠され」生徒は勝手に操作できません。。。

猛暑対策、健康維持のためのエアコン設置が迅速に実現したことを喜ぶと同時に、いくつか課題を指摘したいと思います。

(昨年12月議会で、補正予算に対する賛成討論を行って課題指摘をしましたので、この記事の最後に引用しておきます。)

課題1 本当に冷暖房効果があるのか?

そもそも「開口部が大きく」「壁に断熱対策しておらず」「ガラス窓から熱がスース―逃げる」学校体育館でエアコン、というのは、従来の常識からは首をかしげる(あり得ない?)ものでした。今回の説明会でも「何度下げられるか?(上げられるか?)」には全く触れず、「風速1mで体感温度は1度下がると言われている。熱中症対策に寄与できる」「冬は、暖気は上にたまるものだが、卒業式では冷え冷えとした感覚が和らぎ助かった」とのコメントが紹介されたのみ。

冷暖房の効果は、客観的な温度湿度の数値だけで決まるものではなく、「人間の主観」「心理状態」も大いにかかわっている、と言われていますので、一概に「何度下がった、上がった」だけで評価するのも賢くない。

だけど、やっぱり「科学的客観的な態度」を、西園寺は主張します!

体育館の構造や断熱性能は、1校1校すべて異なりますから、今後、体育館内外の温度を測定し、データを蓄積すべきです。この点、担当者からは「教職員の負担を増やしたくない。内外の気温測定・記録については現在考えていない」とのことで、大変残念です。

子どもたちにとって、「空調による効果」「建物の断熱性能」「費用」「CO2排出と環境負荷」を総合的に学ぶことは、地球規模の温暖化と、日常生活を結びつけ、一人ひとりが考えるための身近で有意義なテーマであることは、疑いのないことなのに!!

課題2 電気料金を、校舎全体から切り分ける

上記のように、エアコン設置の費用対効果を知り、判断するためには、「今回のスポット式エアコンが消費する電力」を校舎の他の電力と切り分けて、データ化見える化することが不可欠となります。この点を質問すると「業者のオプションサービスとして、1年間消費電力のデータを提供してもらえる見通し」と。「それは時間単位?日単位? 月単位ですか?」との質問には「まだ不明」とのことでした。

自然観察園の苦い経験があります

吉祥寺北町にある「むさしの自然観察園」ビオトープに、「地中熱利用の試験的導入」が行われたのは2017年度でした。既にあった地下水利用の池を利用し、建物の冷暖房に使うものでしたが、その後電気料金のデータを請求したところ、前年度より増えてしまっていること。それだけでなく、施設全体の消費電力量と切り分けていなかったため「試験的導入」と言いながらそもそも費用対効果を検証できないシステムであったことが判明したのです。(2018年9月議会での、西園寺発言の抜粋を引用しておきます)

見える化は不可欠

市民の皆さんからは「温暖化防止のために、エアコンを我慢して熱中症になってもいいの?」と批判を受けるかもしれません。実際似たような意見を議会内でもいただきました。西園寺が指摘しているのは、「温暖化か、エアコンか」という二者択一、天秤にかける議論ではありません。両方大事にするためにこそ、客観的で冷静な判断の基礎となるデータを見える化すべき、という主張です。

課題3 体感温度と運用方法

特定の商品を宣伝するつもりはありません。類似の測定器は、数千円程度で入手できます。

昨年の猛暑で「WBGT」の活用が不可欠となりました。体育館にもWBGT測定器が設置され、ふだんの授業や部活動で、熱中症対策に使われています。

エアコンをいつ使う? 誰がスイッチを入れる?

担当者によれば、「運用ガイドライン」を作成する予定だが、現在検討中。とのこと。現時点では「操作盤に施錠し、原則校長判断で使う。つまり児童生徒が勝手に操作できないようにする」「使用を制限する方向ではなく、使ってくださいというスタンス」「施設開放など地域の方にも使っていただく方向で検討する」とのことでした。

エアコンリテラシー?

これから暑さ本番。使ってほしいような、使わないで済ませたいような複雑な気持ちです。エアコンが使えるから災害時も安心ね、という気持ちと、「身を守るのは機械でなくて、一人ひとりの備えだよね」という気持ちが混じっています。そして、いつも思うのは、「こんなに猛暑が続くのはけっして偶然でも天災でもなく、人間の経済活動の必然的な結果でしょう」ということ。

一人ひとりが、客観的な事実に基づき、考え判断できる力をつける。生活者ネットワークと西園寺は、さまざまな場面で一貫した主張をしてきました。シチズンシップ教育しかり、環境教育、性教育、LGBT啓発、メディアリテラシーしかり。誰かがやってくれてうまくいったらそれでよし、トラブルあったら文句言う。それだけではダメ。

体育館エアコンの活用状況を今後も注意深く見守っていきます。

2018年12月18日本会議における西園寺の「補正予算に対する賛成討論」

(発言者 西園寺みきこ) 議案第62号 平成30年度武蔵野市一般会計補正予算(第3回)に関して、会派を代表して賛成討論を行います。
今回の補正予算では、この夏の猛暑を受けて、災害時の拠点となる市内18の公立学校体育館へのエアコン設置の方針が示されました。年度内に3校へのリース契約が調ったとの提案でありました。市民と議会からの要望を受けて迅速な決定と対応をされたことを、会派を代表して高く評価いたします。命を最優先にという松下市長の判断に賛同いたします。
その上で、公共施設の環境性能と見える化の観点から2点申し上げたいと思います。今回のエアコン設置に関しては、そもそも体育館は設計のときからエアコン設置は想定しておらず、空調には向かないすかすかの構造であるとの現状認識がありました。今回設置する機器は、物流倉庫やビニールハウス向けの商品ということで、あくまでも緊急対策と受けとめております。
そこで1点目なのですけれども、今後、学校校舎建てかえの検討を進めていく中で、最初の設計の時点からZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を目指していくこと、つまり、壁や天井の断熱材をできるだけ厚くしていくこと、窓など開口部の考慮を最大限することなど、暑さ寒さを建物全体で和らげるための断熱性能に注力してほしいということ、ひいては、毎年の光熱費は最小限になるように、建物の寿命が60年あるいは70年と考えられますが、そのトータルコストで削減されるように考えていただきたいということを強く求めたいと思います。
なお、このネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を目指すということについては、体育館だけではありません。もちろん校舎全体、公共施設全体に言えることであります。武蔵野市では2011年に作成した公共施設白書で、環境性能という試算値を掲載しておりますが、その視点をより一層生かして、光熱費は公共施設の寿命全体を見据えたトータルコストで考えるということをぜひお願いしたいと思います。
2点目は見える化です。今回のエアコン設置による効果を検証できるように、見える化していただきたいと思います。命を最優先にとの大方針に異論はありませんけれども、その一方で、電気を使っていく、電気代もふえていく、この点も間違いのないことです。再生可能エネルギーへのシフトがまだまだ進んでいない現状では、電気を使えば二酸化炭素排出量がふえてしまう、温暖化につながってしまうという懸念も残るわけです。この点をよく見合わせて、市民が賢く使っていくためにはやはり見える化が必要です。私たちが公共施設で、学校で、この体育館で使っていくエネルギーを検証可能にするような取り組みを求めて、賛成討論といたします。

 

2018年9月28日本会議における西園寺の「2017年度決算に対する賛成討論の抜粋」

(発言者 西園寺みきこ)次に、衛生費は4点述べたいと思います。1、29年度導入された自然観察園地中熱利用試験的導入に関しては、前年度より電気使用料が増えていたこと、空調の分だけ切り分けて比較できるシステムになっていなかったことが明らかになりました。試験的導入と言いながら、検証可能でなかったこと、市民に対して答えを示せなかったことは、大変残念に思います。今後数年間の推移を見守りながら、次の事業につなげていただきたいと思います。