水は命を守るとりでその1~民間のやりやすいように、とは?

世界中の人々が、水を守るために、立ち上がっています。

西園寺みきこは、生活クラブ運動グループ創の主催で、今年「水は命を守るとりで」をテーマとした3回連続学習会を開催しました。その報告を4回に分けて投稿します。

なお、この記事は、「ごみ・環境ビジョン21」の機関紙「ごみっと・SUN」から執筆依頼を受けて書き起こした原稿(11月発行のVol16に掲載される予定)を手直ししていることを申し添えます。

「民間がやりやすいように」とは?

2018年末可決してしまった「水道法改正」。これまで水道事業を運営してきた自治体が、浄水場などの施設を所有したまま、運営を民間企業に売却する「コンセッション化」が促進されることになりました。

コンセッション化とは、従来の民間事業委託(水道の検針を民間事業者に委託する)のとは全く異なります。2011年の法改正で「公共施設等運営権」が設定され、民間事業者が「運営権を買う」ことが可能になったのです。「運営権譲渡って何?」「売るって何を売るの?」「誰が得する?」わからないことが多すぎます。

先陣を切って2020年度にコンセッション化の本格検討が始まるとされる宮城県では、県主催懇談会資料に「民間事業者のやりやすいように」と明記されました。「民営化」と聞くと、「効率上がる」「人件費安い」「柔軟に時代の変化に合わせられる」プラスを考えがちです。本当にそうでしょうか?

 

水道民営化は世界各地で破綻、再公営化が世界の流れ

西園寺は昨年、東京・生活者ネットワーク環境部会の政策学習会で岸本聡子さん(トランスナショナル研究所/注1)を招き、水道民営化が世界各地で破綻し、市民が積極的にかかわって再公営化した流れを学びました。

1980年代サッチャリズムに始まる公共事業民営化は世界を席巻。(わが国の民営化もNTT1985年、JR1987年でしたね) 世界各地の水道事業も民営化されましたが、むしろ「水道料金が上がった」「漏水率が悪化」「トラブル発生で事業者が責任を取らない」「税金でツケを払うとんでもない契約になっていて、その契約を解除するのに莫大な違約金が必要」などなど、耳を疑うような事例が多数起こったのです。EU内の豊かでない国に水道メジャーが参入した例も。(EU内弱肉強食ですね)

これらの経験を経て2000年以降、パリ市ベルリン市を含む世界835事業以上で「水道再公営化」が行われました。こうした世界の前例を知り、地元武蔵野市で「水を守る」ための連続学習会を開催しました。以下、その報告です。

 

水道事業民営化の狙い

連続学習会の第1弾は8月3日に開催しました。ドキュメンタリー「最後の一滴まで~ヨーロッパの隠された水戦争/注2」上映会と内田聖子さん(PARC共同代表/注3)トークです。

世界各地で「水を守る」「市民自治を守る」ために立ち上がった人々の姿から、「《民営化が善》なんて幻想に惑わされてはいけない」「水を守るためには、市民が監視できる透明性・公開性が不可欠である」「お任せではいけない」など、重要なことを学びました。

内田聖子さんは、世界の動きを紹介しつつ「ではなぜ日本は世界に逆行する民営化に熱心なのか?」と話を進めました。

内田さんによれば現政権の成長戦略の一環として「国内の水市場を開放し外資系企業を含む民間投資を呼び込みたい」さらに「和製水メジャー(これって東京都の水道事業のことかも?→その4へ)を育成して海外特に成長途上のアジアに進出して稼ぎたい」からだ、と。そのためにも国内自治体に「民営化の経験を積ませたい」。こういう目論見らしいのです。

注1…岸本聡子さんはトランスナショナル研究所(オランダ、アムステルダムの政策研究NGO)研究員。

注2…ドキュメンタリー映画「最後の一滴まで~ヨーロッパの隠された水戦争」(59分)2018年制作(ギリシャ) http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/uptothelastdrop.html

注3…PARC(NPOアジア太平洋資料センター) http://www.parc-jp.org/index.html