水は命を守るとりでその2~独自の道を歩んできた武蔵野市

水の学校は、上水・下水・雨水浸透など水循環全体を学ぶ市民対象の連続講座です。

独自の道を歩んできた武蔵野市

第2弾は、武蔵野市の水道部職員を招いての「武蔵野の水~今とこれから」を8月30日に開催しました。

武蔵野市・昭島市・羽村市は、他の多摩27市町村と違い、都営水道(東京都水道局)に参加(注4)せず、単独事業を続けてきました。単独事業とは、庁内に水道部があり、自前職員がいるということです。

武蔵野市は地下水100%の昭島市・羽村市と異なり、地下水8:都水2のブレンド水を飲んでいることが特徴です。他の(都営水道に統合されている)多摩地域他自治体は、各々の割合でブレンド水を飲んでいますが、事業主体が東京都であるため、ブレンド割合は必ずしも把握できません。東京都の水事業が、地下水を水源として明確に位置付けていないことが原因の一つです。

一方武蔵野市も、災害時バックアップ機能が不十分であることから2008年「都営水道一元化を目指す」舵を切り、資産評価や耐震化工事の負担割合など、困難な都との交渉の真っただ中にいて、市民に大変わかりにくい状況にあります。

8月30日(金)、かたらいの道市民スペースにて。奥は武蔵野市水道部の職員。小学生の社会科見学を担当されています。
参加者からは、「一元化で職員さんがいなくなるの?」との声があがりました。

学習会に参加された方々からは次々に「水道法改正で、民営化されたら武蔵野のおいしい地下水が飲めなくなる?」「身近で頼りになる水道部職員がいなくなったら災害時誰が来てくれるの?」「都知事次第で、東京水道も民営化してしまう?」「一元化に舵を切ったのは間違いだったのでは?」などの声があがりました。

 

テロ対策のために見学できない浄水場

学習会の企画段階で、浄水場見学を申し込みましたが、テロ対策のためNGでした。(小学生社会科見学のみ受け入れている)。

浄水場がターゲットになり得る社会事情を考えると理解できますが、そうやって市民との距離を遠ざけるのはよくないのではないでしょうか? 水に関心を持ちわがこととして考える市民を増やすべきではないか?との疑問が生じました。なお、武蔵野市では水循環を学ぶために「武蔵野市水の学校/注5」という独自の取り組みを行っています。

家庭での水の使われ方:東京都水道局 平成27年度 一般家庭水使用目的別実態調査より。

また、市の職員が「社会科見学の小学生に、『自宅で水道水をそのまま飲んでいる人!』と聞くのですが、手を挙げるのは2割くらい。大部分は浄水器、ミネラルウォーター、ウォーターサーバーなどの水を飲んでいる、と答えます。もともと水需要の75%が風呂・水洗トイレ・洗濯などで、直接飲んだり顔を洗ったり、炊事に使ったりは2割ちょっとなんです」と語っていたのも印象に残りました。

世界でも「水道水をそのまま飲める」国は、10か国程度。日本はもともと水が豊かな国土、さらに高度処理を加えて、東京都水は改善されてきました。にもかかわらず世界最高レベルで安全に飲める水のほとんどを、トイレや洗濯で流しているなんて、なんだかフクザツ…。中水(注6)利用もなかなか進みませんしね。

 

武蔵野市の水道、基本のキ

水道施設の耐震化率 武蔵野市46.9% 東京都43% 全国平均39%

⇒ かなり進んでいる。と言えますが、半分以上が未了。この事情は全国共通であって武蔵野市だけではありません。今後数十年かかる気の遠くなる事業です。「明日大震災が来たらどうする?」とは市民も議員もよく言う話ですけど、事業の進捗を倍速、四倍速で、というわけにはいかないのが現状です。国土強靭化、というならこっちが先では?

有収率(漏水の少なさ) 武蔵野市96.2% 東京都96.7% 全国平均90%

⇒ 東京都平均にはやや劣るが、かなり優秀。漏水が10%以下、というのは、世界では断トツのトップ。日本の水道管技術はスゴイ。出典:(公財)水道技術研究センターHP http://www.jwrc-net.or.jp/index.html

水道料金(一定の条件下で) 武蔵野市2,681円 東京都2,710円 昭島市1,803円 羽村市2,462円

⇒ 昭島、羽村より高いが、東京都水道局より少し安い。出典:ダイヤモンドオンライン全国水道ランキング 2019年1月12日記事 https://diamond.jp/articles/-/190263?page=14

水道事業の運営 一般会計と切り分けた「公営企業会計」として運営されています。2020年4月からは、下水道事業も「公営企業会計」に移行することが決まっています。

 

注4…多摩地域ではもともと、各市町が独自に水道事業を行っていた。しかし、1960年代以降、急激な人口増加などを背景とした深刻な水源不足や、区部・市町村間での料金水準等の格差是正を求める各市町からの要望が寄せられた。これを受けた都は、1970年多摩水道対策本部(現・多摩水道改革推進本部)を設置し、1973年以降多摩地域の水道事業都営一元化を推進した。

注5…武蔵野市水の学校は、2014~2018年の5年間実施された市民対象の連続講座。上水・下水・雨水浸透を含めた「水循環」を学ぶことが目的。受講経験者のうち希望者が次年度以降のサポーターとして参画する積み重ね型の講座運営が特徴。2019年度からは運営方法を変えて継続中。サポーター経験者が自主的に活動を始めた、既に失われた用水路の記憶の掘り起こしにつながった、などの成果を挙げている。受講生は浄水場見学が可能。

注6…上水=水道水など、飲用に適した水を供給する水道のこと。中水=水洗トイレの用水や公園の噴水など、飲用に適さないが雑用、工業用などに使用される水道のこと。下水=生活排水や産業排水、雨水などの汚水を終末処理場に集約し処理する施設全般のこと。

 

西園寺みきこは、生活クラブ運動グループ創の主催で、今年「水は命を守るとりで」をテーマとした3回連続学習会を開催しました。その報告を4回に分けて投稿します。なお、この記事は、「ごみ・環境ビジョン21」の機関紙「ごみっと・SUN」から執筆依頼を受けて書き起こした原稿(11月発行のVol16に掲載される予定)を手直ししていることを申し添えます。