10月7日 和光市の地域包括ケアを学んできました

生活者ネット市議10人で共に学びました。

 10月7日(水)、生活者ネット多摩北エリア市議有志で、和光市の地域包括ケアを学んできました。

 和光市の地域包括ケアは、「ケア会議の実践例」として全国的に知られており、今回の視察で講師役を務めた東内京一保健福祉部長は、いわゆる「カリスマ職員」として厚労省の委員を歴任された方。今年1月には、埼玉・和光市の高齢者が介護保険を“卒業”できる理由: こうすれば実現する! 理想の地域包括ケア」を出版されています。今回の視察も全国からの議員視察6団体との同時開催となり、東内部長による独演会?とも言える熱気あふれるものとなりました。

1.ケア会議でOJT

 話を伺っていて驚いたのは、東内さんご自身がケア会議の進行役として地域包括ケアを身をもって築いてきた当人であるということです。このように現場の生の声を十分に聴いている職員が施策を立案し、国に提言している。本当に価値あることです。印象的だったのは、ケア会議で1人ひとりの当事者に関する報告を行うときに、「簡潔にまとめなさい」と口を酸っぱくして指導してきた。1人20分以内で進行するようにOJTの観点で指導してきた。と強調されていたことです。ケアするスタッフの方は、当事者に寄り添おうとするためあれもこれも気配りをする傾向があります。しかしケアにあたって「何が優先事項なのか?」要点をまとめる訓練が実は重要。有効なケアを持続するためのこの訓練は、現場にこだわってきた職員ならでは、の指摘だと思いました。

2.医療と福祉の連携

 医療(医師・看護師・薬剤師・療法士など)と福祉(介護福祉士・ヘルパー・ケアマネジャーなど)の連携、とよく言われます。武蔵野市では、2008年から「脳卒中地域連携パス」(急性期医療⇒回復期医療⇒施設や在宅でのケア)、2011年から「もの忘れ相談シート」(認知症対策)を実施し、共通の定義で用語を使い、1人の当事者を切れ目なく支援していくためのツールとして連携を進めています。

 本来、スムーズであるはずの「医療と福祉の連携」が実態としてなかなかうまくいかなかった原因は、医師を頂点として成り立ってきた医療現場のあり方。長い歴史のある医療専門職と、歴史の浅い介護専門職との間の齟齬などがあったと思います。

 和光市の東内部長は連携を「リンケージ」「コーディネート」「インテグレーション」と3段階に分けてとらえていると述べていました。人と人をつなぐ、という観点は、私たち生活者ネットワークの活動にも通じるものです。

3.介護保険からの「卒業」

 2000年の導入以降、「保険料を払っているんだから、堂々とサービスを使って生活の質を上げていきましょう」と私たちは発言してきました。役所の現場の職員の方々もそのように呼びかけてきたと言っています。しかし、「要介護度は進んでいく一方」「介護度を下げるのは不可能」という思い込みがあったかもしれません。和光市では、要支援2の方が1に下がる、あるいは要支援の対象から外れるという(病気で言えば完治、に相当する?)方を増やすことを目標に、オーダーメイドでのリハビリを組んでいく点が、大変印象的でした。2014年のNHKクローズアップ現代「介護からの卒業式」。

4.「やってあげる」ことが能力を下げてしまう?

 ケアというのは「その方ができないことを代わりにやってあげる」ことと考えられてきました。「優しくしてあげること」が介護だとも。しかし本来は「失った機能を取り戻してその人が元気だった姿に少しでも近づけること」がケアなのではないか? 「車でお迎えに行ってデイサービスに通わせてあげる」よりも、「大好きな友だちに会いに行ける」「好きなデパートに自力で行けるようになる」ための筋力トレーニングなどの支援と励ましが必要なのではないか? その人に合わせたオーダーメイドの支援のためには、複数のケア者により客観的で科学的な分析に基づいたプログラムが必要です。和光市の取り組みにはまだまだ学ぶべき点がありそうです。