【年末の国政の動き】
年末が押し詰まってきてから、国政で大きな動きがありました。
「原発の輸出」「武器輸出三原則の緩和」「八ッ場ダム建設再開」。
どれも驚くことばかりです。原子力発電は人間の手に負えない未熟な技術であり、ひとたび事故が起こればコントロール不能に陥ることが明確になったというのに、なぜ輸出しなければならないのでしょうか。エレクトロニクスの発展により民生品と軍用品の境界があいまいになりつつあるとはいえ、十分な議論もないままに緩和するとはとんでもないことです。
八ッ場ダムについて、生活者ネットワークは、東京都の水需要予測が過大であること、現地が地すべり地帯であることなどから、地元住民の方の生活再建・地域再生を前提に、反対しています。国は、ダム建設と他の方法を取る場合を比較して、ダムを作るほうが安くつく、と説明していますが、その大前提となる治水・利水の考え方に齟齬(そご)があることに対して、納得のいく根拠を示していません。
国が示したこれらの政策は、本当に私たちにとって有益な選択なのでしょうか?
生活者ネットワークは、「大事なことは市民が決める」市民自治の考え方を基本としています。私たちの生活をよくするには、政治家を批判するだけでは不足です。どんな政治家を選ぶのか。その政治家にどんな政策を進めてほしいのか。私たち自身が耳をそばだて、目を見開いて、しっかりと意見を言うことがますます重要になっています。
【原子炉をゼロにする期限を決めた計画表を作成する】
12月議会最終日、「原子力発電に依存しないエネルギー政策の確立を求める意見書」が採択されました。これは、6〜12月に出ていた原発関連14本の陳情の中で、採択となった2本の陳情の趣旨を基にしたもので、全文はこのHPの末尾に記載しました。
東京・生活者ネットワークは、18ある基本政策(http://www.seikatsusha.net/policy.html )の1つに以下を挙げています。
●大量消費型の生活を見直し、原発依存のエネルギー政策を転換させる
・消費電力の料金目安や環境配慮度の表示を義務づけて、省エネ製品を普及・拡大する
・電力会社への買取義務化などで太陽光発電や風力発電・バイオマスなど自然エネルギーの促進をはかる
・現在建設予定の原子力発電所計画を中止し、将来的には原発を廃止する
この政策に沿って、武蔵野・生活者ネットワークでは、省エネ(公共施設でのフィフティフィフティルール導入や、庁舎ISO対策など)や自販機設置の見直しを提案してきました。また、議会外で、六ヶ所村や上関町の活動、市民風車建設を支援してきました。
今まで原発関連の陳情を多数決で却下し続けてきた武蔵野市議会。が、3.11の原子力災害を受けて大きな変化がありました。想像を絶する放射能汚染の現実を前にして、党派や政治的立場を超えて「脱原発」へシフトしてきているのです。
その状況を踏まえ、①多数決ではなく全会一致で採択すること。②武蔵野市議会をあげて「原子力発電に依存しない社会へ!」と宣言できること。を目指して調整に努めてきました。
最終的に全会一致での採択に至らなかったことは残念でなりませんが、武蔵野市議会の意思として「原子力発電に依存しない社会へ!」と明確に宣言できたことは、将来に向けて確実な一歩になったと感じています。
「市議会から国に意見書を出しても、どうせ放置されるだけであまり意味がない」とうがった見方をする方があります。省庁に届いた後、紙くずになってしまった意見書も確かに多いのでしょう。しかし、意見書を出す、ということは、議会としての意思と立場を表明する、重要な意味があります。今後は、この意見書を基にして、武蔵野市でやれることを市民の皆さん・行政の皆さんと一緒に進めていきます。
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原子力発電に依存しないエネルギー政策の確立を求める意見書 (2011年12月21日採択)
3月11日に発生した東日本大震災により東京電力福島第一原子力発電所が被災したことで、原子力発電所は万が一事故が起きた際は、非常に危険であり、その被害が甚大なものになることが明らかになりました。
これまで「安全性」が強調されてきた原子力発電所が、実は地震や津波といった自然の威力の前には実に無力でありました。一たん事故があれば、ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなど大量に放出・拡散された放射性物質により、私たちの国の国土、海洋、大気が汚染されます。人間のみならず、生きとし生けるものすべての生存を危うくします。また、農作物、海産物、水などの汚染を通じた内部被曝の懸念、とりわけ、大人よりはるかに感受性が強い乳幼児・妊婦への影響が心配されています。
原子力発電所の使用済み燃料などの放射性廃棄物の処理は、多大な時間と費用をかけてもなお解決不能です。また、原子力発電所で被曝の危険にさらされつつ働く労働者の問題もあります。
かかることから、原子力発電依存のエネルギー政策から、再生可能な自然エネルギーへの政策転換が求められています。同時に、低エネルギー社会への移行のために、私たち市民、企業等もいっそうの努力が必要です。
よって、武蔵野市議会は、国に対し、原子力に依存しないエネルギー政策の確立のため、下記事項を強く要請します。
記
1.省エネルギー施策を推進すること。
2.再生可能な自然エネルギーの研究・開発を推進すること。
3.原子力発電所の新増設はやめ、既存の原子力発電所の原子炉をゼロにする
期限を決めた計画表を作成すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成23年12月 日 武蔵野市議会議長 きくち 太郎
衆議院議長・参議院議長・内閣総理大臣
総務大臣・文部科学大臣・経済産業大臣・環境大臣・国家戦略担当大臣 あて