〇「パレスチナ問題の現状と課題」
岩浅紀久(いわあさとしひさ)さん 3月24日(土)
中東問題って何が原因だとお考えですか? 宗教対立だ、と考えているのでは? パレスチナがなぜ貧しいか? 複雑な国境線を超えて輸出するため、検問所を何か所も通り通行料を払わなければならない。占領政策による生産性低下が経済成長と生活向上を妨げている。
日本のODAは役立っており、感謝されている所もあるが、ガザ国際空港がイスラエル空軍基地になってしまったり、パレスチナ人が通れない(検問所が作られてしまった)ラマッラ—の道路、ピンポイント爆撃されたのに賠償請求していない外務省ビルなどのケースも多々あることを知ってください。
岩浅さんは、中東の地理・歴史を踏まえ、現地の人々が実際に何に苦しんでいるのかを話されました。
「お恵みではない支援」として、輸出しやすい(検問所を通らないで済む)地域に中小企業団地を建設し、農業・農産加工を軸とした地域経済に資するプロジェクトを進めていることを話されました。
マスメディアによる中東問題の報道が、画一的に荒んだ戦闘場面ばかりなのはなぜでしょうか。宗教だけではない、石油だけではない、私たちと同じ、普通の市民の暮らしが抑圧されている現状を正しく知ることから始めなければならないと感じました。
〇「生きる選択肢を、紛争地の人々へ」 瀬谷ルミ子さん 6月10日(日)
この日は、インターネットを通じて多くの若い世代が来場し、立ち見が出るほどの熱気のある会になりました。
瀬谷さんと岩浅さんのお話で共通していることは、「お恵みの支援はダメ!」という点です。現地の方ができることはやってもらう。(過去のODA支援のように)すべてやってあげることは支援にならず、むしろ現地の方たちのやる気や能力を萎ませてしまう。
おねだりばかりしていて断るのに苦労したある村のリーダーさんを、数か月ぶりに訪ねたら、太陽光パネル・蓄電池・携帯電話をしっかり自前で入手して使いこなしていた。「なあんだ、できるんじゃないの〜」と呆れたけれども、買って与えてしまう方法を取らなくてよかった、これが支援のあるべき姿だ、と納得した、とのお話が印象的でした。
〇武力で解決などできるわけがない
岩浅さん、瀬谷さん、紛争地の生の現場で働くお二人のお話には、一度も「武装」「軍備」という言葉が出てきません。普通の市民生活の向上を目指すために何が必要かを、考え行動しておられるお二人でした。
最近の若い世代は関心が内向きだ、覇気がない、などと発言する知事がおられますが、そうでしょうか。瀬谷さんの講演会には、「何か役に立つ仕事をしたい!」と強く願う若い世代の参加者が多く来場していました。私たちは、そのような若い世代の意欲やエネルギーをしっかりと受け止めていく仕組みを整えていく必要があると思います。
講師プロフィール
岩浅紀久さん
IBM・フィリップス社に勤務の後、ベンチャー会社を立ち上げ、JICAの委嘱で占領下パレスチナを企業の立場から支援する独自の活動をしている。一方、経済問題の研究者として東京大学・京都大学の研究員を務める。実践家としてはイスラエル・パレスチナとの交流、子どもたちとの交流に尽力されている。
瀬谷ルミ子さん
NPO日本紛争予防センター事務局長。ルワンダ、アフガニスタン、シエラレオネ、コートジボワールなどで、国連PKO、外務省、NGOの職員として勤務。アフリカのPKOセンターで軍人、警察、文民の訓練カリキュラム立案や講師。第二回秋野豊賞受賞。2011年、Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人25人」、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー。