大阪都構想は否決、が、住民投票の使い道は「わかった!」

 5月17日投開票された「大阪市における特別区の設置についての投票」は、1万票あまりの僅差で「反対」が上回り、大阪都は実現しないことになりました。

生活者の視点、地方分権の視点からみると…

 大阪市が持っていた権限や財源を大阪都に移すという動きは、地方分権の流れに逆行しています。生活者はよりきめ細かい行政サービスを求めており、今回の大阪都構想に賛成しきれなかったのは当然の結果と言えます。

無駄遣いと節約、縦割りストップは、常に政治の役割

 今回の動きのそもそもの原因は、大阪市と大阪府の不効率な二重行政に対する批判でした。政治は、行政の分断にストップをかけ、効率的な行政運営をリードすべきです。維新の会と橋下氏は、既存政党や既得権益を持つグループに対し、市民目線での強い鉄槌を下した。その点は冷静に評価しなければならないと考えます。

真の目的が見透かされたのでは?

 しかし、大阪市内39か所で開催した市民説明会では橋下市長の政治姿勢に対する厳しい指摘が相次いだといいます。目先の切れ味は鋭く爽快感があるが、根本の目的は国政進出なのではないか? 安倍政権に対するアドバンテージを得ることなのではないか? 

 そんな疑念が拭いきれなかったように思えます。「大阪の問題を、個人の野望に使うな!」と言う批判に橋下氏は応えきれなかった。

投票率は66.83%・・・YES or NO で選ぶ住民投票への理解は深まりました

 今回の住民投票は、憲法95条に基づくもので、原発都民投票(2012年都議会で条例案否決)や小平市都市計画道路の是非を問う住民投票(2013年5月に実施されたものの、投票率50%未満のため開票されず。裁判係争中)などとは異なり、結果が拘束力を持ちます。

 自分の選択が、行政システムを大きく変える可能性がある。住民にとって「政治は自分たちのもの」という実感を得る、初めての経験だったかもしれません。

 安倍政権と距離を置いた自民党と、共産党、民主党が「本部の党議拘束に従う」のではなく、「目の前の有権者のために手を組んで選挙を戦う」という通常ではありえない光景を目の当たりにした有権者は、政党に対して新たな視点を得たことだと思います。

人を選ぶ選挙と、政策を選ぶ住民投票を組み合わせ、一層市民自治を進めましょう!

 市民目線、生活者目線で活動し、選挙を戦ってきた生活者ネットワークにとっては、議員が「誰かの命令に従う」のではなく「自分たちの生活実感に基づいた選択をする」ことは当然。「○○党のいうことには反対」「○○さんが言うなら信頼できるから賛成」ではなく、自分で考え選択し、結果を引き受けられる有権者が増えていくための取り組みを一層進めていきたいと感じます。

 今回の報道の中で最も印象的だったのは、自民党大阪市事務所に「正しい知識を知って投票しましょう!」というポスターがあったことです。これこそ、住民投票を呼びかけてきた生活者ネットワークが常に訴えてきたこと。カリスマ性やPR宣伝の華やかさに流されず、本質をきちんと見分ける賢い市民が増えていくことこそが、「持続可能な」「他国から信頼される」「平和を保てる」国づくりそのものなのです。かけ声の勇ましさや目先の鋭さだけに騙されてはいけない。何度でも繰り返し訴えていきます。