ひとり親支援から見えてくること~赤石千衣子さんのお話

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赤石さんは厚労省社会保障審議会「ひとり親家庭の支援の在り方に関する専門委員会の「参加人」。委員ではなく、委員会合意で参加発言自由の「参加人」。結果として最も多く発言している、とのことです。 当事者意見の反映に関心が薄すぎ、です。厚労省!

2月11日(土)NPOしんぐるまざーず・ふぉーらむ理事長赤石千衣子さんのお話を伺いました。武蔵野市男女共同参画推進センターヒューマンあい主催。

赤石さんは、ひとり親支援の先駆者として、また困難を抱えた方々の支援を通じて、見えにくい社会の課題を提示し続けておられます。朝日新聞の論壇委員などの幅広い活躍に以前から注目していました。

お話の中で最も興味深かったのは、「5人のシングルマザーと子どもたち」実例でした。ダブルワーク。DV離婚。子ども世代への連鎖。10代での妊娠出産。うつ。学校や友だちに言えない。生活困難であることを気づかれないようにひっそりと暮らしているぎりぎりの家庭の現状と痛みが、赤石さんの身体を通して、こちらに伝わってきました。

ひとり親支援を強化すると離婚が増える?

保守的な議員から、「ひとり親支援を強化すると安易に離婚するようになる」と批判されたことがあると赤石さん。それはおかしいと西園寺も思います。DVがあってもがまんしろ、という主張でしょうか??? 今や男女のいずれかが再婚である率は、婚姻の2割です。人生の次のステップに進むまでの間、ひとり親と子どもの暮らしを守ることは、社会全体の利益。この点をゆるがせにできません。

辛いお話の中で、いくつかのヒントも。

「制服交換会をやれば、必ず当事者とつながれます」

武蔵野市の小中学校で、標準服やジャージ、学用品などのリユースコーナーが設けられているところがあります。「貧困対策」と露骨にわかるようなスタイルではなく、自然な形で定着することが望ましい。3月議会で確かめるべき課題です。

「ぼくはお父さんのような道は選ばない」

NPO女性ネットさやさやは、DV被害を受けた女性とその子どもたちに対する同時並行心理教育プログラム SSMCIP(Saya-Saya・Mothers’&Children’s Intervention Program)を実施しています。プログラム「びーらぶ」は、親も子どもたちも、それぞれ個別に体験とグループワーク(兄弟は別々に参加)を通じ、暴力なしにコミュニケーションできることを学び、自己肯定感を高めることを目的にしています。

参加した男の子がプログラムに取り入れられた寸劇を見て「ぼくはお父さんのような道は選ばない」とつぶやいたそうです。この体験が、彼の人生にとってどんなに大きな一歩であったことか。困難を抱えるすべての子どもたちに、そんな体験の場が用意されていたら、と願わずにいられません。

通信制高校に保育をつける。妊娠出産即中退ルールをやめる。

かつて西園寺が高校教員を務めていた時、出産が発覚した女生徒がいました。その時、教頭が朝の職員会議で「本校始まって以来の不祥事です。3年〇組の●●が出産いたしました」と報告した時の驚きと違和感、もやもや感は忘れることができません。「不祥事、なのか?(でも女子高生が出産するのはマズイな…)」「過去にもあったはず(でもウチのクラスでなくてよかった…)」「女子生徒は処分され、相手の男性は? (ちゃんと結婚するなら不祥事にならない?)」「家族は気づかなかったの?(やせ形の女の子。しかも家庭不和だったようだ)」

2011年に議員になって以来、若い世代の妊娠出産中絶などについて学ぶようになり、当時の違和感もやもや感に答えが見つかるようになりました。あの女子生徒が温かい家庭に恵まれず、相談できる人にも出会えず、出産まで気づかれずに過ごさざるを得なかったその背景にこそ目を向けなければならなかったのです。

現在の高校教育制度で手当できないとすれば、社会の中のセイフティネットとして、10代の妊娠出産育児を見守るしくみが新たに必要なのです。赤石さんからの提案がよく理解できました。

ひとり親家庭の半数が「貧困」ではあるが…

しんぐるまざーず・ふぉーらむHPに、貧困という文字は使っていない、と赤石さん。実態として経済的支援、現金給付が不可欠であることは間違いないのですが、ぎりぎりで踏ん張っている方々にとっては、うしろめたい感情を抱かせない、明るい印象が大事。シングルファーザーにとって「異性の娘の性教育」などお役立ち情報あってのひとり親支援だと語られていました。ひとり親に限らない普遍的な制度、例えば高校中退者への支援や母子手帳渡すときの目配り、なども充実させるべき、との指摘に、理解が深まりました。

就学前支援の拡充

まもなく29年度予算案が提示され、3月議会で審議されます。今年度から「就学援助費(入学準備金)の入学前支給」「高等学校等修学支援事業の創設」が実現します。前者は1年のうち最もお金がかかる3~4月にこそ支援が必要、との指摘に応え、前倒しで支給するための制度変更。後者は使い勝手の悪かった武蔵野市奨学金制度を廃止し、新たに創設した制度で、高校入学前に6万円、6月に5万円を支給するもの。支援対象者が広がりました。子どもたちの進学に少しでも役立ってほしいと願います。