障がい者のための入所施設3か所を視察 アールブリュットにも注目
2月20日(月)議会厚生委員会で、障がい者のための入所施設3か所を視察しました。
武蔵野市吉祥寺北町5丁目にある放置自転車保管場所を、障がい者のための入所施設として使う計画が進んでおり、既に説明会が開催されています。住宅街の中に施設新設するためには、周辺住民の方々の理解と協力が不可欠。都内3か所の施設を見学し、近隣との関係構築を主なテーマとしてお話を伺ってきました。
中野区メープルガーデン
戦後引揚者と母子家庭の授産指導から始まった社福愛成会は、今も女性のみ60人が暮らす施設です。中野駅北部は、もともと陸軍の土地、戦後払い下げを受け大学などが立地しました。愛成会も国の土地を借りて女性・母子家庭・子どもの支援、平成に入ってからは大人の障がい者の生活の場に取り組んできました。
周辺の住宅とは壁一枚と言ってもいいぐらい近いですが、施設側が「先住民」。戦後すぐからこの土地で活動しているため、トラブルはほとんどなく、近隣との関係は良好です。
メイプルガーデンが今もっとも力を入れているのは、「公益事業」である「アールブリュット」。入居者が描いたデザインで、部屋の名標や案内表示板が製作されていました。中野区、商店街、LGBT関連団体などと連携して大きなイベントを実現。優れた作品の著作権保護の相談事業にも取り組む、など、「障がいのある方が地域で能力を発揮して暮らす」ことの実現が夢ではなくなってきたことを痛感しました。
調布市知的障がい者援護施設「なごみ」「そよかぜ」「すまいる」
調布市・府中市・三鷹市の市境、東京外語大学近くにある調布市の外郭団体の施設です。元市の管理職を務められた方が事務局長・総合施設長となり「天下りというのかどうか」。最も現場を知り熱意のある適任者が適所に就いた、というべきでしょう。
三市と都の綱引きとなった「入所者枠」の攻防。その後「施設から地域へ」の流れとともにグループホーム設置へ。そのプロセスでは近隣からの反対もあった、とのことでした。
ここは、味の素スタジアムが目の前、富士山の見晴らしもきく広々としたエリアです。都立府中けやきの森学園や特養ホームなど計画的に配置されているようすが、(今、公共施設の再配置で悩み多い武蔵野市から見ると)大変うらやましく感じました。
大沢にじの里
今回の視察でもっとも心を打たれたのはこの施設です。
まだ遠方の施設に預ける、のが主流だった1995年、「障がい者が地域で共に暮らすための場を!」と強い思いを抱いた当事者家族と養護学校の教職員・校長先生などが「にじの会」を結成。社会福祉法人設立の準備に取りかかりました。「子どもが成人したらマンションを買う頭金を援助するぐらいのことをするのが親のあり方だ。障がいがある子どもたちの生活の場を作るために、自分たちも出資しよう」と10数人で2.7億円を出し合い、物納された農地を取得。周辺の同意を取り付け、紆余曲折の後、施設竣工の2003年まで8年かかったということです。
「同じ親ですから気持ちはわかります」建設工事を始めるまで、周辺住民の方対象に、2年間で3回の説明会を実施。ほとんどは理解してくださったが、1軒だけ難しい方が。(何と現在はその方が一番の応援団に!というドラマみたいなエピソードもお聞きしました) 当初「土地評価が下がるのではないか?」「小さい子どもにイタズラされるのではないか?」と不安がっていた方々も今は何もおっしゃらない。反対意見は「よく知らない」ことから来るのではないか?と思われます。
近隣からの反対が収まった理由
2008年に三鷹市内でグループホームを設置した際、近隣の方ほとんどに反対され困った経験もあった。その時に大きな救いとなったのは、「にじの里」近隣の皆さんからの声だった。「にじの里」周辺に301部配布、111部回答(うち匿名56部)の結果が、非常に好意的なものであり、上記のような不安はないと明確な答えが出たから。(迷惑と感じたことがある2人、ない105人、無回答4人。など)
「近隣の方に救われました。それ以降、広報紙「にじの会だより」を周辺に1,500部配布し、より一層近隣の皆さんとの連携を強めています」との力強い言葉でした。