当事者の声を聴いて~不登校経験者からの要望書

2月22日、市内で不登校を経験した子どもさんの保護者から、要望書が提出されました。

市内の保護者の方から、メールをいただいたのがきっかけです。ご連絡くださった当初はまずご自分の理不尽な経験を聞いてほしい、と血の出るような文章でした。が、武蔵野市で現在「子どもの権利条例」に向けた検討委員会が進んでいることをお知らせすると「HPで会議録を読みました」と返信。

数回のやり取りと面談の後、要望書提出を決断されました。個人情報のもれで手ひどい経験をされたことを踏まえ、完全に匿名、特定されるような情報は伏せての要望書提出です。当時のことを思い出すだけで「いまだに胸が苦しくなります」との辛いお気持ちの中、今後の子どもたちのために、と要望書提出を決断してくださったこの保護者様に心からお礼を申し上げ、敬意を表したいと思います。

要望書は、松下玲子市長、竹内教育長、26人の市議会議員の他、検討委員会の喜多明人委員長ほか委員の皆さん全員にも届けられました。3月議会では複数の議員がこの件を取り上げて質問につなげています。要望書を抜粋して下記に示します。

 

2022 年 2 月 22 日
武蔵野市長 松下玲子様  武蔵野市教育長 竹内道則様  子どもの権利条例検討委員会 喜多明人委員長様 委員の皆様 市議会議長 土屋美恵子様  市議会文教委員会委員長 大野あつ子様  市議会議員の皆様

市内在住 不登校経験者の保護者より
武蔵野市の不登校対策に関する要望書
私は、市内在住の不登校だった子を持つ保護者です。現在、武蔵野市で子どもの権利条例をつくるための検討委員会が進行していることを知りました。わが子の不登校で経験した「市の対策の遅れ」について感じたことをお知らせし、今後に活かしていただきたいと考え、要望書を提出します。

1.不登校のきっかけ
小学校高学年のときの学級崩壊でした。(略)

2.その後の対応
(略) 学校はこの状況を保護者会で共有することもなく、学年崩壊しているという事実を認めようとはしませんでした。(略)小学校に入学した当初、小学生になったのが嬉しくて「学校の人はみんな友達」といって学年を超えて友達を作り、授業で先生から聞いた話を楽しそうに聞かせてくれた子が学校に通えなくなるとは夢にも思っていませんでした。

3.必要なのはカウンセリングではない
(略)完全に不登校になる前から教育支援センターに相談に行っていました。相談員によると教育支援センターはカウンセリングが中心で学校と連携しておらず、学校に改善を促すことはできないといわれました。わが子にとって必要だったのは「安心して通える学校」であり、カウンセリングではありません。(略)

4.個人情報がもれていた
担任や他の教員の個人情報の取り扱いに問題がありました。(略)

5.SSWの権限が小さい
SSW と繋がったのは市内の中学に進学してからでした。引き続き登校できない状況でしたので、SSW の存在は頼もしく感じましたが、すぐに不信感に変わりました。(略) 対策ではよく SSW の増員が挙げられますが、校長や教員に理解がなければ SSW をいくら増やしても意味がありません。SSW の雇用形態が不安定なのも、SSW が学校寄りの対応になるひとつの理由である気がします。子供や保護者に寄り添う姿勢のある人材を正規で雇い入れることも必要だと思います。

6.相談が解決につながらない
学校では定期的に児童や生徒がスクールカウンセラーと面談することになっています。学級崩壊が深刻になっていた頃、わが子に限らず複数のクラスメイトが相談していましたが、改善につながることはありませんでした。児童たちのなかでは「スクールカウンセラーに相談してもどうにもならない」という諦めの声が挙がっていたそうです。(略) 子どもの権利条例では子どもが直接相談できるそうですが、早急に改善していると感じられなければ意味がありません。信用と実行力を証明しない限り運用は難しいと思います。

7.当事者への聞き取り調査をしてほしい
不登校児童や生徒のいる家庭への聞き取り調査は重要です。(略) 広報で不登校に関する議会の答弁は必ず見ていますが、当事者不在の発言が多くがっかりしています。不登校の原因を調査した結果でさえ、当事者に直接聞いていないのが現状です。

8.検討委員会の議事録を読みました
子どもの権利条例制定に向けて準備がなされていることを初めて知り、早速議事録に目を通してみました。委員長の喜多さんのお考えには共感することが多く、大変期待しております。
喜多委員長は、子どもが相談しない理由を「大人が秘密を守れず情報を共有してバラしてしまうからだ」と発言されておりましたが、まさにその通りだと思います。声をあげることで子どもが傷つくことがない厳格なルールづくりを慎重に進めていただければと思います。
検討委員会には不登校のお子さんがいる方が参加されていて、市の対応に不信感を表しておりましたが、その方が「直接」相談できるようにすることにこだわった理由も痛いほどわかります。現在のシステムでも学校に相談する窓口はありますが、担当を問題のある先生にすることで相談しにくい状況を作っていたこともありました。直接相談する先はまだ明らかになっていませんが、できるだけ客観的な立場の方にお願いしたいと思います。

9.視点をかえてほしい。被害者がチャレンジルームに、ではなく、加害者側にこそ支援が必要
わが子の不登校は、学校の対応で防ぐことができたはずです。海外では、いじめなどの問題行動をする子どもはすぐに支援が必要だとして改善されるまで別の場所で更生プログラムを受けるそうです。武蔵野市に限らず日本では被害を訴えた子どもがカウンセリングや不登校支援の教室に通うことが当たり前となっており、被害者やその家族を更に傷つける結果となっています。
真面目に授業を受けたい子どもがカウンセリングやチャレンジルームに通うよう促されるのではなく、問題を起こした子どもがカウンセリングやチャレンジルームのような場所で更生プログラムを受けるのが本来の支援なのではないでしょうか。なぜあのとき、学校は騒ぐ児童を隔離せずにわが子の学ぶ権利を侵害したのかいまでも許せない気持ちがあります。
学ぶ権利を侵害されたまま放置される現状は変えなければなりません。国の対応を待つだけではなく、武蔵野市として発信していただきたいと切に願います。
以上