武蔵野市のPFASの取り組み~その1 災害用井戸に浄水器が設置されました
武蔵野・生活者ネットワークと西園寺みきこは、2020年1月以来、地下水の有機フッ素化合物(PFASと総称)汚染について要望を続けてきました。
1.飲料水用地下水源の「井戸ごと検査」を実現しました。
武蔵野市は、27本ある深井戸からくみ上げた地下水を約7割。東京都水道局から買った河川水を約3割。2か所ある浄水場で混ぜて、水道水として供給しています。水質検査の詳細はこちら。
昭島市、羽村市と並び、都内で独自で水道事業を実施している武蔵野市は、水道事業者として安全な水を供給する義務を負っています。水質検査も法で定めた項目に追加して行っています。
しかし、PFASに関しては2か所の浄水場出口でしか水質検査を行っていませんでした。
2020年1月に、多摩地域でのPFAS汚染が明るみに出た直後、「井戸ごと検査」を緊急に行いましたが、その後は様子見。生活者ネットと西園寺、他議員の要望が強まった2023年1月、3年ぶりに「井戸ごと検査」を実施。それ以降は毎年測定して経過を追う、と取り組みが前進しました。
今のところ、水源用井戸で「50ng/㍑」の暫定目標値を越えたところはありませんが、30ng超えはあるため、注意深く測定を続ける必要があります。
2.災害用井戸に浄水器が設置されました
地下水利用は、水源用井戸だけではありません。市が直接管理している「災害用井戸」は武蔵野市の公立学校敷地内に18あります。この井戸はふだんは全く使っていませんが、災害時に学校施設が避難所になる場合、「飲料水や生活用水として用いる」と地域防災計画に位置付けられており、非常用電源とセットで管理されています。
昨年6月に市が水質検査を行ったところ、7か所で上回ったことが判明。(最大194ng/㍑の井戸がありました) それまで設置していた滅菌機(塩素を加えるタイプ)で不十分とわかったため、新規に浄水器を設置することが23年9月補正予算で決まり、今年3月に設置されました。18か所、旧機器の撤去費用と、新規設置合計で、3,300万円。
この浄水器は、非常時に河川水・湖沼水・プール水にホースを投入して電源ボタンを押すだけで使用可能、という製品。逆浸透膜フィルター方式により、1時間あたり350リットル。1日あたり1,000人分以上の水が確保できます。PFASのみならず、細菌・塩素・農薬・重金属・放射性物質など、ほぼすべての不純物を除去できる、とのこと。
また、以前の「塩素を加えるタイプの滅菌機」は操作に習熟を要する欠点がありましたが、この浄水器はスキルは不要。初動要員が新人職員であっても稼働できることが特徴です。
写真の浄水器はビニール袋をかぶったまま。「稼働訓練はまだしていないのですか?」と質問したところ、「市役所に置いてある同じ機種を使って、初動要員全員の稼働訓練は済んでいる」とのことでした。
「非常時」は起こってほしくはありませんが、明日起こるかもしれない、のが事実。万が一のとき、簡単に稼働でき、飲み水にも使える浄水器が備えてあることは心強いです。
3.個人所有井戸の水質検査補助
地下水を利用しているのは、市役所だけではありません。大きな事業所、病院、大学などの教育機関。また農業者の方をはじめとして個人所有の井戸を使っている方々がおられます。
23年9月の決算特別委員会で、地下水利用の全体像を知るため、資料請求したところ、市管理48本。民間所有105本。合計153本の井戸があることがわかりました。
これらの民間所有の井戸のうち、水質検査を希望する方を対象に、検査費が6年度当初予算でつきました。この8月に対象となる方全員に案内を出し、手を挙げた方の井戸水サンプルを測定する手はずになっています。項目は「PFOS、PFOA、PFHxS」の3つ。580万円がつけてあります。
これはどこの自治体でもそうなのですが、この結果は原則公表されません。もし深井戸であれ浅井戸であれ、暫定目標値を超えたところがあった場合、私たちはそれを知りたい。公金で測定するのだから、値を公表してほしい。汚染の広がりを知りたい。
しかし、現在の法律では義務付けることはできない。との答弁でした。仮に50ng/㍑超えたとして除去費用など汚染対策は今はできない。飲み水にしない。使わない。井戸を止めてしまう。などの対応は所有者の責任で判断していただくしかない、のが現状です。
この結果の活用について、議会で要望を続けていく必要があります。