住民投票条例~本当の目的は市民自治、排除しない

12月議会に上程された「住民投票条例」案について、ご質問をいただきました。この条例案は、昨年3月に全会一致で可決した「武蔵野市自治基本条例」第19条に基づき、「住民投票」成立の要件や有資格者、署名集めの具体的なルールを定めるものです。

 

質問1 「選挙」と「住民投票」は違うのですか?

答え 議員や首長を選ぶ=人を選ぶ選挙と、個別テーマの賛否を問う=政策を選ぶ住民投票は、ともに憲法で保障された権利です。が、選挙は法に基づく。住民投票は自治体ごとのルールで実施する点が異なります。

住民投票には、常設型(一定の要件を満たせば、首長や議会の意思によらずに、必ず住民投票を行う方法)と、単発型(個別の案件について住民投票を行うという、1回だけの条例を求めるもの)があり、今回の武蔵野市の条例は前者です。

 

質問2 どんなときに住民投票を行うのですか?

答え ①配置分合・境界変更、つまり隣自治体と合併の賛否を問う場合など。②住民から一定数を超える請求があった場合。(昨年制定した武蔵野市自治基本条例で、実施すること自体は全会一致で決めました。今回の条例は具体的なルールを定めるもの)

 

質問3 どんな例がありますか? 投票結果の拘束力は?

答え 2019年沖縄県「辺野古基地移設」の是非を問う県民投票。2013年小平市「都道計画」の是非を問う住民投票がありました。全国では新駅建設・原発・産廃処分場・可動堰などの是非を問うために実施されています。沖縄県の例でご存知のように必ずしも投票結果が尊重されるとは限らないのが現状です。小平市では投票率が50%未満で開票すら行われず焼却されてしまいました。

 

質問4 武蔵野市の条例の特徴は?

答え 有権者の1/4以上(約3万人にあたる)の請求が要件です。これは首長リコール請求の1/3よりは低いけれど多くの市民の意思が集まらなければ達成できない。投票率50%で「成立」。

このように、ハードルはけっして低くはありませんが、ハードルを越えて成立した場合は、市長と議会は結果を尊重する。と自治基本条例19条に明記しました。

また、投票できる有資格者に「外国籍市民も加える」ことも特徴です。(居住3か月以上、18歳以上。という要件は、日本人と同様です。日本人であっても、住民票を移して3か月経っていないと選挙権がないのはご存知の通りです。これは別の課題ですね)

 

質問5 この条例の目指すものは?

答え 市内に大きな課題があるのに市長も議会も取り合ってくれない。万が一そんな事態に陥ってしまったとき、主権者である市民が「自治の力」を発揮できる。それがこの条例の本当の目的です。

いい方を変えればこの条例があることにより、「市長も議会も市民の声を無視してはいけませんよ」と担保したことが本当の目的なのです。

武蔵野市内には、現在3,000人を超える外国籍の方が暮らしています。外国にルーツや縁のある方は学校にも福祉現場にもたくさんおられます。公立小中学校には各クラス各学年、必ず外国に縁のある子どもたちがともに学んでいる。納税もされています。

ともにまちづくりを進めるパートナーとして住民投票から外す選択肢はありません。

排除と疑われるような条例にしてはなりません。

諸外国で日本人が受け入れられ、参政権を与えられたり、コロナ禍にあって留学生に給付金が与えられたりしている事例を、私たちはよく知っています。

 

質問6 条例ができるまでにどんな議論がされたのですか?

今回の住民投票条例は突然出てきたものではありません。そこは誤解のないようにお願いしたいと思います。

2005年に誕生した邑上守正市長が「自治基本条例の制定」を施政方針で掲げて以来、情報収集や調整を進め、2016年に「自治基本条例に関する懇談会」を設置しました。ここには、地方自治の専門家2人(お2人とも長年武蔵野市政にかかわって来られた方)+公募市民2人(男性女性)+議会から2人(当時の副議長と議会運営委員長)+研究者(成蹊大学法科大学院の教授1人)+副市長2人の9人で、課題の整理を進めました。経過は市役所HPをご参照ください。

懇談会は、市長選挙をはさんで足掛け3年、22回に及びました。パブリックコメント募集、無作為抽出による市民ワークショップ、コミュニティ協議会での説明会など、広く市民意見をいただいたのも、自治基本条例が制定されるずっと以前から、武蔵野市の市民参加の歴史を深化させるために「当たり前のこと」としてやってきたことです。

 

質問7 今まで、議会はどのようにかかわってきたのですか?

上記で述べたように、懇談会を設置した当初から2名が参加して、議論に加わっていました。この2人が「議会を代表して発言する」というわけではありません(26人の議員の考えは多様でさまざまです)ので、懇談会の進捗に合わせて「議会各会派、全議員」と懇談会委員との意見交換の場を設け、ポイント整理を重ねてきました。2019年から2020年にかけて、市議会内に「自治基本条例審査特別委員会」を設置し、3回の委員会で審査を行っています。(委員会で修正案が出され否決されましたが、その内容は住民投票にかかわるものではありませんでした。公共施設等を作る場合に住民意見を聞く場を設けるという一文を加えるかどうかで、既に自治基本条例の中に書かれている内容でした)

これらの経過に参加し、他の議員の言動を見てきた市議会議員として、西園寺みきこは自信を持って、今回の住民投票条例の件のご説明ができます。まるで知らなかったことのように発言されている市議会議員さんがおられることに、信じられない思いを抱いています。

また、懇談会が進んでいた時期、議会内では「議会基本条例」の制定に向けた取り組みが進んでいました。「自治基本条例」と「議会基本条例」が2020年3月に同時に、しかも全会一致で可決成立したことは、武蔵野市の市民自治を進める上で、大きな価値があったと考えています。

 

以上、住民投票条例に関して市民の方からいただいた質問にお答えしました。この条例案は12月13日(月)の総務委員会で審議されます。インターネット中継でも傍聴できますので、ぜひ傍聴してください。ご意見をお寄せください。