児童虐待と向き合う~杉並児童相談所を視察しました
自治体には「子ども家庭支援センター」が設置され、初期相談や軽めの事例を担当する。児童相談所は重篤な事例を扱う、という二層構造ができつつあるのが最近の動向です。武蔵野市の子ども家庭支援センターには、週1回熟練職員が出向き、情報交換と人材の育成などに努めているとのお話で、実効的な連携に向けて取り組みが進んでいることがわかりました。
2012年4月の民法改正により、児童相談所がチェーンを切って住宅内に入り、子どもを救出して医療を受けさせることが可能になりました。まだ実例はなく代行だけですが、子どもの命を救うために動きやすくなり大きな前進だ、との話には、今まで「親権」が立ちはだかり、もどかしい思いをされてきた現場職員の方々の思いが伝わってきました。
2010年8月に起こった「里親による3歳女児虐待死亡事件」をきっかけに、東京都は検証委員会から提言を受け、人材育成など解決策に一歩を踏み出しています。所長さんのお話からも「子どもの命を救うために動いていくんだ」という強い意志が感じられました。
武蔵野市三鷹市は、都内平均に比べ受理件数は少な目。武蔵野市の通報元は、三鷹市に比べ、近隣知人・地域や学校からがやや少ないというデータが出ていました。原因分析はできていません。
里親制度の是非について。
「子どもにとっては家族として過ごせる里親が望ましい」 その反面、「一旦トラブルが起こると、里親家庭の中で起こっていることが外から見えにくくなる。ダメとなった時に里子も里親家庭双方が傷つき取り返しがつかない」「施設であれば複数のスタッフの目が届き、リスク少ないのが現状」との話でした。
日本人は「子どもは親のもの」「いろいろあっても子どもにとっては親が一番」と考えがちです。この家族観が、「その子どもの最善の利益」に反するケースだってあるんだ、という事実を隠してしまうのですね。
過酷な現場に直面されている職員の方々のメンタルヘルスについては、所長が「職員が働く意欲を継続できる職場環境を整えたい。『自分の生活が大事』と言い続けている」と発言されていたのが印象に残りました。