「家の燃費」の概念をひろげよう! 

ドイツのエネルギー計画は、熱効率のよい「再生エネへの置き換え」「非ガソリン車への置き換え」「住宅での低位エネルギー削減」の3本柱。それは中東危機以降、中東にもロシアにもエネルギーを頼らない、リスクを最小化するのだという、冷徹で賢い国家戦略そのものなのです。

7月11日(土)、脱原発首長会議主催の省エネ住宅セミナーに参加しました。会場には、湖西市長三上元さん、前東海村長村上達也さんなどのお顔も見え、全国の首長さんたちが率直な質疑を交わしていました。

講師は、今泉太爾さん(一般社団法人 日本エネルギーパス協会 代表理事)。日独のエネルギー政策の違いや、長野県の環境審議会委員を務め、県条例制定に尽力された方です。一般社団法人 日本エネルギーパス協会HPはこちら。

今泉さんのお話。

〇日本の住宅は寒い!  日本人は節約の習慣が根付いているが、エネルギー消費は多い。→→→ 住宅のエネルギー効率が、ものすごく悪いから。しかも遠い中東の石油燃料を使っており、地域の資産を海外にもっていかれている。身近にバイオマスなどエネルギー源があるというのに。

〇ドイツのエネルギー政策は、熱効率をよくすることに重点を置く。だから、火力・原子力をやめ、ガソリン車ディーゼル車をやめ、「省エネリフォーム」を大きなマーケットに育てる3本柱の政策を掲げている。熱をタービンで電気にかえ、その電気を遠くまで送電してさらに暖房に使う、なんて効率がきわめて悪いことをやっているのは、日本だけ。3.11以前、「オール電化住宅」を大々的に広告していたが、あんなことは諸外国からは「全くばかげたこと」と受け止められている。

〇新築からリフォームへマーケットを転換すべき。人口1.1億人の日本の住宅市場が22兆円なのに対し、人口8,700万人のドイツでは2,300億ユーロ(約27兆円)。ドイツでマーケットの半分を占めている「リフォーム」部門を日本でも拡大させるべき。日本では住宅販売=新築との先入観に縛られている一方で、空き家が戸数の1割を超えている。リフォームを支援して、地域が潤うしくみにすべき。省エネ性能が基準を満たしている住宅は5%にも満たない。つまり95%の住宅は省エネの視点でみれば「スカスカ」だ。

〇「家の燃費」を当たり前の概念に! 車を買うときは、初期費用(購入代金)とメンテナンス費用(燃料費)を合わせて判断するのに対して、家を買うときはそうなっていない。初期費用だけで判断しているから、薄っぺらい住宅を安く買って、スカスカな状態で冷暖房を無駄にしている。30年単位で判断するしくみが必要。家電と同様に、住宅の「燃費」も当たり前に明示していくべき。

西園寺は2005年9月、国際NGO「FoEJapan」のドイツフライブルグエコツアーに参加。ドイツ人は、国全体として省エネできる「しくみ」を持っている。それに対して、日本人一人ひとりは賢くエコな生活ができているのに、国全体で環境負荷を減らせないのは「しくみ」の問題。政治の問題なのだ。と学びました。

3.11後、ドイツが原発ゼロに方針転換し、着々と実行しつつあるのに対し、日本が国民のおおかたの意思に反する再稼働への道を歩もうとしている姿がダブって見えます。

国では、この6月建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が可決しました。大規模非住宅建築物(2,000㎡以上のオフィスビルや商業施設など)に、省エネ基準を義務付ける。中規模住宅など(300㎡以上のオフィスビルやマンションなど)に省エネ計画の届け出を義務付ける。また省エネ性能が基準を上回った場合「容積率の緩和」などの優遇処置も実施する内容となっています。

武蔵野市では、現在「第四期環境基本計画」策定の折り返し地点で、「中間まとめに対するパブリックコメント募集」が行われています。西園寺を含め、市民は「エコカレンダー」を毎月記録して、光熱費の見直しを行いCO2削減に努めてきました。節約することは日本人の生活実感によく合うのですね。

一方、住宅や建築物の省エネ性能が議論のテーマになってきませんでした。そもそもエネルギーをどのぐらい食う建物なのか? 客観的なデータがありません。

これからは、「一坪〇万円」という建設費用だけでなく、「一坪何kW」という消費電力を明示し、省エネ性能を含めた住宅販売ができるようにしたい。またリフォーム事業がまちの中で増えていくまちづくりを広げていきたいと思います。